<読書の友>
普段小説を読まなかった。大体昔から読書家では全くない。あれ読んだ?これ読んだ?と聞かれても首を横に振るから、相手にしてみればさだめし『つまらない人!』であろう。
ところが最近立て続けに、家族や夫婦を主題にした小説を読んでいる。問題意識からではない。たまたま読んでみたらそうなっているのである。まずは、ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」。次がフローベルの「ボヴァリー夫人」。そして、池沢夏樹の「光の指で触れよ」が現在。手当り次第風、脈絡がない理由は、大体、Nが旅の途中に買って来るものの中から適当にパラッとめくってみて、それと決めて読み始める、そんな調子の読書だから。
「停電」は全くよくできている短編だった。カップルは別れる。そこで何故か、百年以上生きている古典、正統派純文学と言っていいのか?を読んでみたくなって、紀伊国屋で買ったのが「ヴォ」。夫人は自殺し、夫も亡くなる。「ボ」はそう長い時間を扱うのではないんだけれど、たくさんの事件、出来事があり、登場人物描写も微に入りで、なかなか難しい主題と思った。エポックメイキングな古典なので、その時代をもう少し探求してみる必要が本当はある。「光」は、池沢夏樹のメイルマガジン"Cafe Impala"でフランス便りをよく読んでいたので、作品を自然と手に取ることになったが、今日そのものなのでとてもわかりやすい。辛口時評も書く氏はこんな風に小説を書く人なんだなーと感心しながら、一気に読めてしまう。家族は再編成され、現在進行形の、生の、幸せな家族。
小説を読む楽しみ、これが趣味になれば、今後、時間を余すことがない、時間は足りないだろう。何のためにとか、どう読むかとか、後発の読書趣味には、同時に自分への難しい問いもある。